John Bull #178


たぶん、かなりマニアックなセカンドグレードだと思われるJohn Bull。こんなパイプでもどういう訳か日本には少なくとも四本はあります。今回はその内の一本、John Bull #178を紹介します。

John Bullとはまた安直なネーミングですが、頭文字のナンバーが1番とのことから相当初期のセカンドグレードなのではないかと思います。#78シェイプなのでFour-dotのタウンネームだとMeltonでね。ちょっとボウルが前傾している絵に描いたような古い感じのサドルブルドック。Sasieniと言えば、どのシェイプもシャープな印象ですが、特に昔の製品は鋭さが際立っていますね。なんか昔の英国の厳格なクラフトマンシップが漂う感じがします。
さて、パイプ工房というと熟練工がコツコツと作り上げる印象があり、現に現在のパイプ工場はそんな感じのようですが、生産量が桁違いだった昔(主に戦前)は必ずしも全工程がそんな感じではなかったようですね。いつものChirs' Pipe PagesにSasieniの30年代のカタログがあり、そこにオーブンキュアリング作業の写真が掲載されていますが、その写真を見れば一目瞭然でしょう。
ちなみに説明は、
Girls sit before the baking ovens, continually wiping away the moisture which is forced out of the wood by the heat and accumulates on the surface.
なんか写真から判断してGirlと言っていいのかどうかはわかりませんが、この写真では六基の装置を使った地味で根気のいる作業はほぼ全て彼女たちの仕事のようです。パイプ工場で女性工員ってのも意外な気もしますが、これはどうもSasieniだけに言えることでは無いらしく、Custom-Biltの工場写真でもかなりの人数の黒人のおばちゃんが写っていました。手元にあるPetersonの冊子にもかなり昔の工場風景が載っていますが、見習いの少年工に混じって今で言う所のメイド服みたいなのを着たお姉さんが工作機械の前に立っていたりもします。必ずしも男の職場ではなかったようですね。そんな訳で皆さんお手持ちの古いSasieniも彼女達が丁寧にフキフキしたものなのかもしれませんね。ま、実際はどうだったかは知りませんが。


刻印はこの通り。しかし、このパイプはセカンドながら全てにおいて質が高いです。写真でもシャンクとステムに全くと言って良い程、隙間が無いのが解ると思います。


どういう訳かステムの造りはかなり特殊です。リップはかなり大型で肉厚。頑丈そのもので相当噛む力が無い限り、壊れることは無いでしょう。開口部も巨大そのものでここまで大きなスリットはDunhillやBarlingでもちょっと無いのではないか、と。フィットメントも特殊形状。ただ、構造は単純そのもので、縦に開いた2本の穴の上下からステムに煙が流れて行く構造です。例によって効果の程はよくわかりませんが。


ステインはいわゆるプラムカラーと言っていいでしょう。グレインは大したことはないですが、仕上げはいいですねえ。どこかに埋めがあった気もするのですが、全く目立たないようです。古い製品特有のディテールなのかボウルトップは、面取り無しです。
古いSasieniセカンドで造りも状態も良好となれば吸い味の方も期待してしまいますが、やはりその期待は裏切りません。味の方はちょっと鋭い感じはしますが、すっきりした甘味。このパイプは甘味というより香ばしさを楽しむパイプでしょうか。主にヴァージニアで楽しんでいます。まあ、Sasieniのパイプは欠点が無い訳ではないですが全体的にソツが無く、なおかつセカンドグレードの中古品であればかなり低価格で手に入るのでビンテージパイプの入門用にはもってこい、と言えるのかもしれません
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