Sutliff : Match Victorian

サトリフのバルクタバコの中でもある意味中核を成しているのがMatch~で始まるタバコ群、要するに製造元が変わったタバコや会社自体が無くなったタバコのコピーブレンドです。アメリカの会社らしく、House of Winsorの製品のような昔懐かしいアメリカンブレンドの復刻が多いのですが、堂々とダンヒルのブレンドのコピーを売っているのも面白い点です。今回はそのコピーブレンドの一つをレビューしてみます。
いつの時代も高級パイプタバコとしてメジャーだったダンヒルですが、これまでに大きく3度ほど変わったいますが、ここでこれまでの歴史を簡単に説明しておきます。
・ 開店~1950年代
1907年の開店当初は顧客の嗜好に合わせて一からブレンドする、完全にビスポーク方式のみ。しかし、早々にその方式だけでは商売にならないことは判っていたので、Royal Yacht、Durbarといった完成品と№965のような注文票の人気銘柄を製品化したマイミクスチャー系統を製品化。その後、ビスポーク方式もタバコバーとして長らく存続する。
・ 1950年代末~1970年代
1950年代末からフレークタバコが導入。1960年代ぐらいからオリエンタルやシリアンラタキアの調達がし辛くなってきたのでブレンドが徐々に変化し、多くのマイミクスチャーやブレンドが整理される。
・ 1981年~2004年
1981年、ダンヒルのパイプタバコ部門が北アイルランドのMurray Sons & Company Ltdに完全に委託。
・ 2005年~2018年
1999年にマレイの親会社ロスマンズがBATに買収された事により、マレイの工場が閉鎖される事が決定され、2005年からは生産拠点がデンマークのオーリックに移転。
・ 2018年~2019年
2018年にダンヒルブランドのタバコ、シガーを完全に廃止することが決定。その結果、完全にダンヒルのパイプタバコが消える運命かと思われたが、STGグループの傘下であるピーターソンにブレンドを移す事でなんとか存続し、現在に至る。
以上がダンヒルのパイプタバコの大まかな歴史です。詳細はPipediaのDunhillの項を読むとより理解出来ます。どの時期がダンヒルタバコの終焉なのかは個人の判断よるとしか言えません。デンマーク製ダンヒルがアリと考えるのであれば、ブレンド自体はまだ終わっていませんし、そもそもそれ以前のダンヒルを知らないのであれば認識のしようもありません。かなりベテランスモーカーでマレイ製もダメというのであれば1981年に終焉を迎えています。私個人の意見としては多くのスモーカーが考えている通り、2005年です。しかし、大々的にアナウンスした訳では無かったので日本では知らなかったパイプスモーカーも多かったはずです。
さて、サトリフのダンヒルコピーは基本的にはマレイ時代のタバコを元にしているようですが、評価は様々です。Tobaccoreviewsのレビューを見てみると、このブレンドだけが他のコピータバコより評価が高いので試してみました。

葉組はいわゆるVA/PERのミクスチャー。カットは疎らで、湿度も適度にあります。匂いも明らかにペリック入りのミクスチャーのソレです。しかし、ミクスチャーのヴァージニアペリックというタバコ自体がかなり少数派になってきた感もあります。そういう意味でも注目度が高いのかもしれません。
吸った感じは・・・これはこれで良いのではないか、と。ちなみに私はマレイ時代のElizabethan Mixtureを吸ったことが無いのでオリジナルに近いのかどうかは比較は出来ませんが、十分に甘味もありますし、ペリックの酸味もあります。記憶に残っている他のVA/PERと比較するとEsotericaのDunbarよりは甘味は無く、マクレーランド2015よりは旨味はありません。ラットレーのマーリンフレークのような甘味も無いでしょう。それらのタバコと比べると辛味も雑味もあります。恐らくは競合商品はC&DのBAYOU MORNINGです。このタバコとはいい勝負ですが、個人的にはMatch Victorianが吸いやすいです。これはC&Dの製品と水分量の差がこの結果を生んでいるのだと思います。
価格を考えると十分に良く出来たタバコです。VA/PERファンであれば一度試してみるのも面白いと思います。欠点は独特の荒々しさですが、これも2~3年の熟成で解決出来るかもしれません。ただ、一つ思うのはこのMatch Victorianという名前がマイナータバコにしている感が否めません。コピーブレンドには違いないのですが、これかこれで完成の域に達しているので缶に入れて何か別な名前で売ればよりメジャーなタバコになり得たのではないか、とも思います。ただし、そのお陰でかなりの安価なバルクタバコになっているのも事実なのでなかなか複雑です。
* 余談
Tobaccoreviewsのレビューを読んでみると色々な知見がありますが、一番興味深かったのがこのタバコに"Stoving"を施すことにより劇的に良くなった、というレビューです。私はストービングという方法は全く知りませんでしたが、何年も熟成を待っていられないとい層が生み出した新なメソッドという解釈?で良いのでしょうか。Googleで検索すると色々と出てきますが、要は、
1.メイソンジャーにタバコを入れる。
2.アルミホイルをかぶせ、ねじ込み式の外枠を嵌める。
(純正の蓋だと密閉しすぎて瓶が割れる可能性が高い)
3.華氏190~220度(87~104℃)程度のオーブンで2時間程度加熱する。
4.取り出して純正の蓋を閉めて水分を閉じ込める。
5.冷暗所で2週間程度放置する。
というような作業のようで、これにより何らかの発酵作用が促進される期待感がある?というような話だと理解しました。他に方法があるようですが、このやり方が一番ポピュラーなようです。恐らくは元々最高に旨いタバコをこのようなプロセスを施す必要はないと思いますので、そうした用途としてもこのような廉価なバルクタバコの需要はあるのかもしれません。
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