Dunhill : Shell LB （製作年代不明）

なにかと人気があるシェイプであるラージビリヤード。要はボウルの大きい大型ビリヤードな訳ですが、特にアメリカではかなり支持されるシェイプです。これまでにいろいろなメーカーから製品化されましたが、その最たる例はこのダンヒルのＬＢでしょう。

　ダンヒルには人気シェイプが数多く存在しますが、その中でも一番人気だと思われるのがこのLB。この存在感は正にダンヒルといった趣で、特にシェルのLBの無骨さは他ではなかなか無い雰囲気です。ヴィンテージパイプファンには基本的なアイテムらしく、好みに関係なく１本持っている人が多いようですが、私もとりあえず1本手に入れてみたのがこのパイプです。


　このLBというシェイプの面白い点は同じシェイプなのに制作年代やロットによって極端に外見が違うところです。シャンクがやや細めのもの、ボウルが頭でっかちなもの、ステムが短いもの、、と千差万別。私のこのLBは太く短い印象が強いですね。スモーカー同士の集まりでLBを持ち寄って並べてみると、大型ビリヤードという点で共通しているだけで、どれ一つ同じものが無いというくらいにバラバラな感じになります。なぜそうなったのかはわかりませんが、大型なボウル故に原材料のブライヤーブロックをギリギリにカットしなければならなかった為に元の材料の差異が出たのではないか？と自分は考えています。


　製作年なのですが、どういう訳かENGLANDの後に何も打刻されていません。最初はたまたま削れてしまったのかと思いましたが、ここだけがピンポイントに磨耗するのも妙なものです。他にもLBの横にPと刻印されているのも良くわからない点です。ただ、パテントナンバーが無く、レターシェイプでこのタイプのDUNHILLの刻印、さらに全体の雰囲気から察するに60年代のシェルなのではないかとは思います。


　シャンクも太いですが、ステムも太いです。リップ周辺の処理も見事なもので、流石はダンヒルといったところ。銜えてみると流石に重さを感じますが、銜え心地は快適なものです。


　これだけ太いシャンクとなると、テノン部分もかなりの太さになります。煙道も太く真っ直ぐで、工作精度に関しても素晴らしいとしか言いようがありません。


　ブラストの具合も浅いながらもなかなかの格好の良いものです。注目はこのリンググレイン。横から見ると放射状に伸びているように見えます。このグレインの出方から察するに、たまたまこういうグレインになったのではなく、意図的にブライヤーブロックから切り出しているのではないでしょうか。

　吸い味は例によって昔のシェル特有の臭さと甘ったるさがあります。このパイプは極端にその傾向が強く出る事が多いですね。チャンバー容量も結構ありますので、その日の気分によってはちょっとしつこい味だなあ、と思うこともありますが、この甘さは素晴らしいものです。
用途としてはラタキア入りのイングリッシュミクスチャーをやや煙量多めに吸うのに向いているようですが、ヴァージニアでもかなり甘めの吸い味が出るので、むしろそちらの用途で使うことが多いです。ただ、これだけのチャンバー容量となると、燃焼が緩いフレークを折って縦に突っ込むというような吸い方だとかなり長時間の喫煙となるので後半に飽きが来ます。タバコを選ぶパイプではありますので、そこが欠点と言えば欠点です。

　まあ、このパイプに関してはあまり細かい事は気になりません。何度か吸っているうちに思ったのですが、このパイプの最大の魅力は「満足感」、これに尽きます。普段は小さめなパイプに固めのヴァージニアフレークを詰めてチビチビと吸う事が多い私ですが、こういう大きめなパイプをドカっと銜えて甘い煙を燻らすというのも妙に気分がいいものです。多くのスモーカーに支持される理由もわかりますね。確かにこれはダンヒルを代表するシェイプでしょう。