McClelland : Blue Mountain

何かと多いバルカンソブラニーのコピータバコ。それこそ何種類あるのかわかりませんが未だに新製品が出てくるということは未だに納得の行くバルカンブレンドを探すスモーカーが多いということなのでしょうか?今回はマクレーランドが発売した№759 Mixtureのコピー製品を試してみました。
何かと話に出てくるブレンドであるバルカンソブラニー。戦前からシガレットと平行して販売され、60年代に英国のギャラハー社管轄になり、2005年まではなんとか手に入った定番イングリッシュミクスチャーです。基本的にはOriginal Smoking Mixture(白缶)と№759 Mixture(黒缶)の2種のラインナップだったようですが、どういう違いがあるのかは#759の方は吸った事が無いのでわかりません。
これまでにいろいろなメーカーが類似品を販売し続け、結果的にバルカン系と言われるジャンルの形成になったとまで言われますが、未だに新製品が出てくるところを見るとなかなか難しいのでしょう。一昔前までは日本でもパウチ入りで普通に買えた訳ですが、やはり無くなると中々それに代わる物が無かったという事なんでしょうか。
最近のパイプタバコ業界のトレンドは原点回帰というか懐古主義なのではないか、というのは以前マックバレンの項で書いた通りですが、特にアメリカ市場では その傾向はより強くなっている感もあります。少なくとも様々なコピー製品が売られているということは昔風のイングリッシュミクスチャーを吸いたいというスモーカー側の需要もかなりあるのでしょう。
まあ、いろいろと似たようなブレンドが作られてきた訳ですが、いっそその試み自体をコンペにすれば面白いのではないか?という事で2011年にBalkan Sobranie Throwdownというイベントがシカゴパイプショーで開催されました。
詳細についてはpipesmagazine.comの記事がが参考になります。簡単に説明すれば、80年代中頃に作られたギャラハー製Balkan Sobranie 759を元にレプリカを作り、3人の審査員がどれが一番近いのかジャッジする、というもの。
挑戦者は
McClelland :Mike McNeil
Hearth & Home :Russ Ouellette
Altadis :Carl McAllister
の3社。
この3種のタバコをX、Y、Zの袋に入れ、完全にメーカー名を伏せて試喫します。対するジャッジは
Rick Newcombe :In Search of Pipe Dreamsの作者
Joe Harb :P&T誌のタバコレビューコーナーの担当記者
Neill Archer Roan : Passion for Pipesの執筆者、著名なパイプコレクター
と、アメリカのパイプ業界のご意見番が揃いました。そして、本選とは別にショーの参加者が投票する企画もあり、こちらはピープルズチョイス賞として表彰されます。
まあ、G. L. Peaseが参加してないじゃないかとか、サンプルが古過ぎるとか、そもそもギャラハー製ではオリジナルじゃない、、といろいろと不満点もあるにはあったようですが・・・初の試みとしてはこれはこれで大成功な企画だったようです(ちなみに2012年はJohn Cotton Throwdownという企画でした)。
結果は本選の勝者はH&H、ピープルズチョイス賞はマクレーランド。詳細についてはジャッジの一人であるニール・アーチャー氏のブログを読むのが手っ取り早いでしょう。コメント欄にはリック・ニューカム氏の見解も述べられています。
要するに相当僅差の勝負でどのブレンドも素晴らしかったとのことなのでしょうか。当然、これは参加したタバコメーカーの宣伝も兼ねているようでして、参加メーカーは新規顧客の獲得が期待できますし、スモーカーはより面白いタバコを試す機会が増える、ということなのでしょう。そして、その後製品化されたのがH&HのBlack HouseとマクレーランドのBlue Mountainという訳です。


葉はこのような感じです。元の#759がどのようなタバコなのか良く知らないので詳しくは判りませんが、恐らくはオリエントメインの白缶に対して、ラタキアメインの黒缶という違いだったのではないかと思います。ただ、pipesmagazine.comの写真を見る限りではX(Black House)とZ(Blue Mountain)の違いが大きいのが気になります。オリジナルの写真も添えて頂ければよりわかりやすかったのですが。
少なくともこのタバコ自体はブリティッシュウッズやフロッグモートンといったいわゆるマクレーランドのイングリッシュミクスチャーという感じではないでしょうね。例の臭いもしませんし、ベタベタと手にくっつく感じもしません。そもそも、大会の趣旨は759のクローンを作り出すことなので、当然と言えば当然です。
ブレンド内容については情報があまり無いのでよくはわかりません。今のマクレーランドであれば、Yenidje産のオリエントとシリア産のラタキアという組み合わせなのではないか?とは思いますが確証はありません。むしろ、それでは安直過ぎる気もします。
ちなみに缶の説明では
Rich with the finest Mountain Latakia, a classic full Balkan pipe tobacco mixture, smooth and deeply fragrant. The inspiration for this elegant mixture was a 21-year-old tin of the legendary #759.
とあり、the finest Mountain Latakiaとは何なのかは気になるところです。
さて、いろいろなパイプで吸ってみましたが・・・なんといいますか良く言えば香味豊か、悪く言えば臭いです。普段ヴァージニアを吸っている自分としては、バルカン系ってこんなに臭かったかなあ、、と思える程、期待通りの臭いが漂います。もちろん、ただ単にラタキア臭がするだけではなく、その奥にあるヴァージニアやオリエントが混合した甘さも感じますが。クラシックなフルバルカンでスムーズでディープな芳香、というのが缶の説明でしたが概ねその通りでしょう。確かに、良く出来たブレンドです。
このブレンドに関してはマクレーランドっぽさは軽薄だと思います。あくまでも古い#759の缶の中身のコピーであり、新ブレンドでは無いということなのでしょうか。特に湿っている訳ではありませんが、火付きも火持ちも悪く、結構クセもあります。決して吸いやすいタバコだとは思いませんが、非常にわかりやすいラタキア入りブレンドなので、とりあえず#759のコピーを吸ってみたいという方にはお勧め出来ます。
さて、このイベントにより2つのブレンドが製品化された訳ですが、その後ジャーマインから正式に白缶が復刻されたり、G. L. Peaseから多少意識したような新ブレンドが発売されたりとまだまだこの手の話題は尽きることがなさそうです。
ただ、一つ言えそうなのはどれが一番正確なのか?という問に対しての明確な答えは現時点では無い、という事でしょうか。Balkan Sobranie Throwdownはあくまでも古いギャラハー製#759のコピーにどれだけ近いのか?というのが主眼であり、缶詰め時点での味わいという訳ではありません。当然レシピも違うでしょうし、もしオリジナルの詳細なレシピがあってそれを各メーカーに配布して再生産しても全く別々なブレンドになる確率は大でしょう。ついでに言えばパイプもスモーカーの舌も違いますし、当時吸っていた人の記憶も完全とは言い切れません。
まあ、ある意味不毛な努力なのかもしれませんが、私もこうして買って試している訳でして、なんとなく気になってしまうのは不思議なところです。
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