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England's best pipe value

Barling's Make : Ye Olde Wood(1921)

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これまでにいろいろなパイプを試してきた訳ですが、なかなかおいそれと試す事が出来ないブランドという物もあるものです。英国製のパイプであればバーリングもその最たる例の一つでしょう。とは言えじっくり選べばなんとか手に入るという事もあるものでして、そんな感じで手に入った一本を今回は紹介します。

実は未だに私にはこのバーリングというメーカーについてはよくわかりません。これまでの情報を簡単にまとめると、
・ 当初は銀細工工房を生業としていた
・ 使用ブライヤーは樹齢100年ぐらいは当たり前
・ 型を使わずに全て手作業で製造する、徹底的にこだわった造り
・ サドルステムが得意
・ シェイプ数が膨大
・ 60年代初頭の短期間で普通の量産パイプに成り果てた
といった感じでしょうか。いろいろと情報を総合し、なおかつ多くの口コミによる好評価もあってか、ヴィンテージ品が高価な価格で取引されることになったようです。ただ、ここまで雲の上の存在になった理由は正直なところ良くはわからないところですが。
個人的な感想としては、
・ 単純に大きなサイズが多く作られていた
・ かなり昔から高品質のサンドブラスト仕上げがある
という点もアメリカ市場においては重要な要素だったようにも思えます。特にアメリカでは大きめのパイプの人気は未だに衰えていませんし、高品質で大きなサイズでなおかつ入念に作られた英国製パイプとなると、ダンヒルのODA以上かコモイのExtraordinaire、バーリングのExEL以上、、という選択肢になるのかな、と。

まあ、中古パイプの中では最高に敷居の高いメーカーではあります。品質が落ちてからの製品が未だに多数流通しているのである程度見分ける知識が必要ですし、いわゆるPre-Transition eraの製品となると状態が悪くとも高値が付きます。そういう訳で全盛期と思われる1930年代に作られたExExELサイズでシェイプがアップルやポットというような典型的なバーリングを手に入れるのは相当な出費をリスクを覚悟せざる負えません。基本的にはこのブログで出てくるパイプは大枚叩いて購入したものは少ないどころかほとんど無い訳でして、そうなってくるとケチな私が手を出すのは難しくなってきます。となると、あまり人気が無い線をじっくりと狙う、という作戦しかありません。そこで狙い目としては逆に小さいパイプ、という事になります。私の好みとも合致していますし、これならばなんとか狙えないこともありません。面白いのはバーリングは小さいパイプも多数出していたところですね。

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シェイプは小型のビリヤード。見ての通り、かなり小型で1920年代以前の英国パイプによくありがちな雰囲気です。ちなみにこのパイプは完全にレストアされた状態で英国から送られてきたもので、なかなか几帳面なセラーさんらしく、レストア内容や取り扱い方法が記載された紙とモールが同封されていました。右の写真がその一部で、なかなか独特なテクニックについて書かれています。

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シルバーリングは流石に銀加工が元々の本業だけあってか、入念に作られています。こういう幅の狭いリングはありそうでなかなか無く、このような職人仕事も失われた技術の一つと言えるのかもしれません。
ホールマークはf、ライオン、ライオンヘッドの順のようですので、1921年に作られたパイプだと思われます。恐らくは伝説的な評価となる一歩前の年代に作られたものでしょう。グレードはYe Olde Woodとの事ですので相当樹齢の古いブライヤーを使っているようです。

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このパイプはバーリングにしては比較的安く購入できましたが、それだけに各部にヤレはあります。残念ながらボウルトップはダメージが大きかったようでトップオフされています。

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当然、ステムもヤレており、歯型もついています。まあ、穴は開いていないのでこれはこれでよしとしましょう。
しかし、各部の造りこみは素晴らしいの一言。2段テノンにラッパ状の面取り、大きめのスリット・・・と仕事が細かいです。ただ、一つ穴のオリフィックステムからスリットに変わった時代故かリップ部分がやや厚めですので、このあたりは好みが分かれるところでしょう。歯型が付いてしまったのもなんだかわかるような気もします。

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煙道は太いです。この太さがバーリングの特徴であるエアフローの良さの要因のようです。

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ただ、ステインや木目は地味そのものですね。このあたりの点については面白みに欠けます。

さて、肝心の吸い味と吸い心地なのですが・・・なんといいますか、かなりキワドイ吸い心地、とでも言いますか。鼻息でも火種が保てる程ピーキーな感じでして、煙がスルスルと舌に入ってきます。吸い味もこってりとまではいきませんがかなり甘めです。香りも素晴らしいですね。
伝説が事実なのかどうかはわかりません。ただ、このパイプに関しては確かに凄まじい性能を誇るパイプには違いないです。しかし、あまり使っていないパイプ、というのが実状なのです。

理由は単純にピーキー過ぎる点。ボウルの壁も薄いので熱くしがちなスモーカーであれば一発で穴が開く可能性すらあるでしょう。極上の美味さを味わえることは確かなのですが、それ故にいろいろと気を使う点も多くなってしまうのです。そんな訳でここ一番でたまに吸うパイプとして活躍しています。特に、マクレーランドのGrand Orientalsシリーズのようなタバコを詰めて吸うと格別ですね。

まあ、この一本でバーリングは凄まじい技術をもったメーカーだった、ということは理解できたように思えます。ただ、自分としてはやはり皆が思い浮かべる全盛期のバーリング、特に30年代の物をいずれは1本手に入れてみたいところですね。手に入れるのは年々難しくなってきているようですが、気長に機会を待ちたいところです。
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コメント

毎度失礼致します。

ついに出ましたね、barling。僕もちょくちょくチェックしてはいるんですが、弾数自体極端に少ないですよね。

sqさんの記事でオールド・イングリッシュの中で唯一と云って良いほど詳しく紹介されていない(そういえば一番最初の記事がbarlingでしたか?)ブランドだったので、気にはなっていましたし、確かに百年越え二百年越えの木ってどんなんよ?と試してみたいところです。

更に最近あるページでそこまでパイプごとの味の違いをよく分からないと云っている人が、何故かDunhillはむちゃくちゃ旨いと云っていて、古い木に興味が沸いているところなんです。
DunhillはDR以外はそこまで古く無くても、最初期のはすでに百年近いですからね。

Re: タイトルなし

どうもどうも。
毎度コメント有難うございます。

バーリングは・・・まあ、落札相場が高値安定でなかなか買えない、
というのが正直なところです。
そのクセ、そこまで美味くない個体もある、というご意見もかなり以前から
聞いてます。
用はリスクが高すぎて手が出しづらいのです。
興味があるにはあるのですが状態がやや難でも100ドル前後が相場となると
やはり敷居が高いと言わざる負えないでしょう。

ダンヒルは・・・そうですねえ、、自分は古いのを買うまでは半信半疑でしたよ。
でも今や週に2度くらいはダンヒルのシェルの出番はあります。
特に調子の良いシェルは安定した美味さがあるような気がしますねえ。
弾数も相場もある程度安定していて、下取り価格も安定している、
という点では最もお勧め出来るヴィンテージパイプと言えます。

ただ、品質や吸い味を考えるとオイルキュアリング時代のもの
はお勧め出来ますがそれ以外の年代はある程度のリスクは
あるような気はします。
以前、手持ちのカンバーランドの吸い味はイマイチ調子が出ないという
記事をここでも書きましたが、あれはあれで出来の良いパイプでして、
時期によっては造り自体が到底評価に値しないダンヒルというのもありますし、
現に自分もそのようなダンヒルを一本所有しています。
そのあたりの判断はやはり難しいところです。

ちなみに、これまででいろいろな会で様々な方々からパイプをお借りして
吸わせて頂きましたが、こりゃあ自分の手持ちのパイプでは到底敵わないなあ、
と心底思ったのはバーリングではなく1920年代以前のBBBでしたね。
造りも入念で風格もあり、吸い味はもう次元が違う、、と感じたような。
ああいうパイプこそ大枚叩いても全然高くない良質なパイプと
言うのかもしれません。

なるほどー・・・。
入り組過ぎててもうちょっとおいらにはワケわからんですね・・・。

ただ最近強く思うのは、あれこれ考えるより実物を手に取りとにかく喫ってみること。
喫ってみない事にはどんな言葉も所詮屁理屈ですから。
というかやっぱりそれに勝る説得力を持つ物は無いですよね。
そう考えて行くと、パイプ云々よりも、まずパイプはなんでも良いからたばこの味を満喫する道を行けば、後からパイプにもこだわるようになるのかなとは思いますが、でも、、、格好いいだもーん(笑

こないだマクレーランドの#2035喫いました。失禁するかと思いました。ここに来てまた、わたくしのたばこ観はガラガラと音を立てて崩れてゆくのでありんす(笑

Re: タイトルなし

まあ、百聞は一見にしかず、、ってのは変えようの無い真理ですかね。

たばこ>パイプということは私も基本的にはそう考えています。
どうにもパイプに凝って来るとパイプばかりに目が行ってしまう傾向は
ありますが、基本的にはガラッと吸い味が違うということは稀ですから。
なんか当たり前な話なのですが、何故か忘れてくるのが面白いところなんですが。

どうにも、昔の日本ではパイプタバコの選択肢がありそうであまり無かった
という事情もあったようで、タバコを固定してパイプを変えていくという
傾向はあったのかもしれませんが、現在は違いますからねえ。
70年代のダニッシュパイプがブームの時とは違って種類は膨大ですし、
アメリカンタイプとイングリッシュミクスチャーの価格差が大きい
なんてこともありません。
なにより、情報量とそのスピードが当時とは全く違います。

とりあえず、今現在で評価の高そうな銘柄を吸ってみるというのは
パイプスモーキングをより楽しくする近道かと思います。
そのうち、どういう傾向のタバコが自分の嗜好にあっているのかが
わかってきますし、そうなってくると吸うタバコも固まってきます。
あとはそれに合わせてパイプも揃えていくのが
無理の無いステップアップ、、でしょうか。
ただ、あまりハマり過ぎるとかなり散財してしまいますが・・・。

しかし、そうなると今現在は何が定番で何がベストバイなパイプタバコなのか?
というのが情報がありすぎて逆に判り辛い気もしますね。
これがシガーであればある程度限定される傾向のようですし、聞きに行くところも
そこそこありますがパイプとなるとなかなか。
どうにも戦前の情報と70年代の情報と21世紀の情報が混在して
よくわからない感もあるような気がしてなりません。
これは一度、様々なスモーカーの意見をを募って
現在の定番というものをまとめてみるべきなのかもしれませんね。

度々お邪魔していますし、僕自身そういうのが好きなんですが、変な話、何が自分が一番好きか迷走してる時って、ネットでサイトを見てそこに没入し過ぎている時が多い気がします。

何気に何も気にせず何気に選んだたばこを喫ってる時が、一番素直にほわ~っとリラックスして楽しめたりして。

ところで最近、日本のオークションも盛り上がって来てますね。質も値段も悪くない感じになって来ている気がします。

あんまり入れ込むと財布も精神的にもヤバいので、、、これからものんびりディープに探究して行く事に致します。

Re: タイトルなし

まあ、気になるものは気になりますからねえ(笑)。
ここ数年を見ても、いろいろと流行り廃れがありましたし。
一昔前は貪欲にパイプやタバコを買い漁る方がもっと居た気もしますが、
その時代に比べると今はいろいろと落ち着いたのではないでしょうか。
それだけに情報がまとまってきた感はあります。

ま、多少時間は掛かるとは思います。
私自身に今の形に落ち着くのにもそれになりの時間は経ってますしねえ。
そこそこ情報を耳に入れながらゆっくりと楽しむのがいいでしょう。

はじめまして。
いつも楽しく拝見しております。
sqさんや諸先輩方にならい、今年から私もオールドブリティッシュ
デビュー致しました。
なかなかに難しい世界ですが、戸惑いながらも楽しんでおります。

そういえば以前から気掛かりだったことがあり、この機会に是非
お伺いしたいのですが・・・
古いパイプたちの保管などで日頃気をつけてらっしゃることなど
ございますでしょうか?
古いからと言って特別どうの等は無いかもしれませんが・・・

差し支えなければご教示ください。

Re: タイトルなし

どうも、はじめまして。
コメント有難うございます。
古いパイプは中古品故にいろいろと面倒な点もありますが、
気になるパイプが出てきたら手頃な物を手に入れてみて、
気長に試行錯誤してみてください。
いろいろと得られる知見も多い、かと思います。

保管についてですが、私としては乾燥うんぬんといったことは
あまり気にはしていません。
気休めに乾燥剤は置いていますが、これもどれほどの効果があるのか?
となると疑問ではあります。

今のところ、自分が一番気を使っているのは、光の遮断ですね。
以前は良く使うパイプは木の6本立てパイプラックに立てていました。
インテリアの雰囲気としてはこの手のパイプラックは最高、、なのですが、
エボナイト製のステムが変色しやすいという欠点があります。
立てておいた正面の方(ステムの上半分)が茶色になってしまうのです。
特に古いComoyのパイプ等は変色も早い気がします。

対策として上に布を掛けておくと大分違いますが、
それでも完全ではないので、布の袋(パイプを買った時についていたもの)に入れて
立てて置いたり、もしくはあまり使わない物に関しては、
木箱に入れて保管したりもしています。
恐らくは桐のような防湿性のある木材で作られた箱や引き出しに並べて置くのが、
最適かとは思いますが、流石にそこまではやっていませんね。

ただ、中には凄い人もいるもので、アメリカのパイプ業界のご意見番?
ニール・アーチャー氏はお気に入りのコレクションの為に
http://www.apassionforpipes.com/neills-blog/2012/2/26/an-artisanal-case-for-artisanal-pipes.html
このようなパイプケースを特注しています。
確かに、この構造であれば光が漏れることも、湿気ることも無さそうですが、
普通はここまではしないでしょう。

まあ、いずれにせよ戸棚か引き出しに入れておくのがいいのかもしれません。
いずれは私も適当な大きさの桐箱かタンスで整理したいところですが、
まずは部屋の整理整頓から・・・となり未だに出来ていないのが現状です。

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