fc2ブログ

England's best pipe value

PIPE-DAN : LORAN

lo1.jpg lo2.jpg
70年代前後に流行したダニッシュパイプ。個人的にはデンマークパイプブーム黎明期から全盛期までのパイプというのも非常に興味があるのですが、資料もパイプもなかなか手に入りませんでした。今回はそんな中からたまたま手に入ったパイプを紹介します。

lo3.jpg
PIPE-DANはH. Dan Christensenが戦時中の1943年にコペンハーゲンに開いたパイプ店。ダニッシュハンドメイド黎明期はこの店を抜きには語れないでしょう。銜えた状態でボウルトップが水平、ボウルが高め、チャンバー径が12mm~17mmと狭め、長めのシャンク、、といった特徴を有する“Shape reformed”が有名でした。これは、ダン・クリステンセンが考える美味いパイプを具現化したものらしいのですが、実際のところどうだったのかはわかりません。機会があれば一本ぐらい程度の良い中古を買ってみようかとも思っていたのですが。詳しくは松山荘二著「デンマークのパイプ」(1983年、青英舎)か梅田晴夫著「THE パイプ」(1973年、読売新聞社)を読んで頂くのがてっとり早いです・・・がこれらの書籍自体がレアになってしまいましたね。

まあ、ベテランパイプスモーカーの皆様には言わずと知れた有名どころでしょう。ですが、1991年の閉店から既に20年近く経っているので、21世紀のパイプスモーカーにとっては遠い昔の話かと。ブランド自体が消滅してまっている以上、実際に手にする機会はおろか、名前を耳にすることも減ったと思います。面白いのは松山荘二氏自身も「デンマークのパイプ」の中でPIPE-DANは自分の中ではもう過去の話、、みたいなことを書いている点。正確な年月日は忘れましたが、70年代の中頃に店主のダン・クリステンセンが没してからのPIPE-DANの製品は品質は下がり、価格は上がった、、というような記述があります。ファンシーパイプのバイブル的な存在の氏の著作ですが、、実際のところは80年代初頭の時点での「昔は良かった」的な懐古主義的な話だったのかもしれません。そういう点は21世紀の今でもさほど変わらない気もしますが。
ちなみにこのパイプはたまたま露店の古道具屋で購入したもの。所有する機会がこうも簡単に訪れるとは思ってもいませんでした。

lo8.jpg
さて、一口にPIPE DANの取り扱いパイプとと言っても実際のところはほぼファクトリーメイドと変わらないカタログシェイプから、シクステン・イヴァルソン作の一点物のハンドメイドまでいろいろあったようですが、このパイプはLORANの刻印が打ってあるので恐らくはIb Loranの手によるハンドメイドなのでしょう。
Ib Loran氏はほぼPIPE-DANの専属パイプ作家だったようですが、資料がほとんど無いのでどのような作家だったのか詳しい事はよくわかりません。恐らくは80年代には既に製作はしていないのではないかとは思います。今回、資料を探してみて唯一写真が載っていたのはDanishpipemakers.comに掲載されている、かつてロイヤルコペンハーゲンの磁器パイプをデザインした際の記念写真のみ。左からラルス・イヴァルソン、ヨーン・ミッケ、アンネ・ユリエ、そしてイブ・ローラン。偶然にも今回のパイプとほぼ同等のシェイプを手にしています。この写真でもわかる通り、この時点で既に初老の作家だったようです。ただ、他の3人がビッグネーム過ぎてどうにも影が薄い感は否めません。
全盛期のダンでは様々なパイプのデザインや製作を盛んに行っていたようですが、カタログの最初に堂々と名前が出ている同僚のゲルト・ホルベックやスヴェン・クヌードセンに比べると裏方に徹しているという感が・・・。本家カタログでこの扱いでは「デンマークのパイプ」の取り上げ方がホルベック>>>>クヌードセン>>>>ローランといった感じになったのも無理もない事のかもしれません。ちなみに松山氏は「プアマンズ・ホルベック」と称していたそうで、これは現に価格が安く、気兼ね無くダニッシュハンドメイドを楽しむことが出来る、と好意的?な愛称だったらしいです。

lo4.jpg lo5.jpg
刻印のアップ。1970年11月の日付が打たれていて、ダンヒル以上に製作年代の判別が簡単かつ詳細です。ちょうど日本でのダニッシュブーム全盛期の頃のパイプで、たぶん前のオーナーは佐々木商店かどこかで手に入れたのでしょう。DANのパイプの独特な特徴はパイプ自体に価格が刻印されている点。このパイプだと125クローネですね。これによって当時の正札がいとも簡単にわかります。この価値が日本ではどの程度だったのかは当時の人間ではない私には分りかねますが、いくらプアマンズ・ホルベックとは言えダンヒルよりかは安い、という程度の価格はしたのではないかとは思います。この刻印は資料的には面白いのですが、、ただ、なんというか一瞬で価値の上下がわかってしまうのもなんか良いような悪いような・・・。Pの刻印はPinholeの略らしく、、どこかに穴埋めがあるのでしょう。

lo6.jpg lo7.jpg
ステムはマシンメイド的なきっちりとした感じでもなく、ハンドメイド的な手作り感漂うものでもありません。断定までは出来ませんが、どうもプレスしたのもを手直しした物のように思えます。少なくとも材質も造りもそこまで良い物ではないでしょう。PIPE-DANのスタンプが押してあるところを見ると、ステムだけある程度量産して後で調整したものなのかもしれません。
やはりあくまでも廉価ハンドメイドの位置付けだったのでしょうか。ただ、銜えた感じは悪いものではないですね。もう少し薄いものであればもっと銜え易かったとは思いますが。確か、このあたりの調整はコペンハーゲンの本店で無料で受け付けていたらしいのですが、、今となっては遠い過去の話です。

lo9.jpg lo10.jpg
シェイプはクラシックとフリーハンドの中間点を狙ったいかにも古風なダニッシュといった感じ。どことなくホルベックのPoloniusにも似てますね。ただ、ステインも木目もどうにも高級感に欠けます。このあたりがプアマンズ・ホルベックと呼称されたゆえんでしょうか。

lo11.jpg lo12.jpg
シェイプ自体はかなり実用性を意識してデザインされたものだと思います。ベントでありながら煙道は極力ストレート、というのも吸いやすさとメンテナンス性を考慮した初期ダニッシュの特色と言えるでしょう。ボウル形状が底に行くほど太くなっているのも、タバコの燃焼が安定する中盤以降にボウルが過熱しないようにする効果もありそうです。あと、単純に重心が下の方になるので置いた時に転がりにくいです。もちろん、握り心地が良いという重要な要素?もちゃんと押さえてあります。個人的にはこういう発想はなかなか面白いと思うのですが、不思議な事にハンドメイドの作風としては現在ではあまり残っていませんね。

このパイプの最大の利点は非常に使いやすいという点でしょう。銜えっぱなしでもストレスは感じませんし、エアフローも良く、何の苦も無く底まで吸いきれます。あと、高級感が無いというのも使いやすい理由なのかもしれません。欠点には違い無いのですが、その分気兼ねなく使える感はあります。
ただ、ちょっと吸い味にクセが無さ過ぎるかな、と思う事はあります。これは以前手に入れた古いスタンウェルと似たような感想になりますが悪く言えば薄味といった感も否定出来ません。こればかりは個人の嗜好によって評価が分かれてしまうのでしょうけど。
まあ、イヴァルソン父子やゲルト・ホルベックの作品のような持っているだけで満足できるようなパイプではありませんが、実用品としては一流だとは思います。そんな訳でこのパイプの出番は結構あります。特にPeter StokkebyeのLUXURY NAVY FLAKEのような軽めのヴァージニアを突っ込んで吸っていますが、そこまでタバコを選ばずともそこそこ美味しい味は楽しめるでしょう。

今回もなかなか楽しめるパイプが手に入りました。こういう70年代前後のダニッシュパイプでダニッシュブーム当時を追体験してみる、というのも中古パイプ収集の醍醐味と言えるのかもしれません。どうしても弾数と価格の点で敷居が高くなってしまいますが、これからも機会があれば試してみたいものです。
スポンサーサイト



コメント

マクレーランドの記事、勉強になりました。

はじめまして。
歴は長いのですが(年寄りなので)パイプは駄物がごくわずか。とっかえひっかえいろいろ吸ってます。
イギリス物がほとんどでしたがごく最近アメリカ物に手をだし、また昨年暮れにブログを始めました。
マクレーランドを初めて買い(国内では高くて手がでませんでした)おもしろいタバコだなと思い、ネット検索してたどりつきました。
すばらしいreviewを読ませていただきました。
これからも勉強しにまいります。
記事をたのしみにしてます。

どうも、はじめまして。
ブログの方は以前から楽しく拝見させて頂いています。
レビューも面白く読ませてもらってますが、
毎度いい雰囲気の写真が格好いいなあ、、と思っておりました。
自分も機会があればあのような写真を撮ってみたいものです。

タバコは以前は企画はアメリカ、生産はイギリスのジャーマインのタバコ、
ESOTERICAよく吸っていましたが、
今ではマクレーランドが常喫に落ち着きました。
特に独特の臭いがするレッドヴァージニアが中心のタバコが好みですね。
まあ、欠点もいろいろあるかとは思います。
このケチャップ臭がどうにも苦手という意見も否定は出来ません。
あと、イングリッシュミクスチャーの場合はいわゆるスモーキー、、
というか正露丸臭というようなモノを期待すると、ちょっとがっかりするかもしれません。
ただ、このヴァージニアやオリエントを生かした独特の甘さはちょっと他のメーカーでは
無いと思いますので、個人的には気に入っています。
特にDARK STARやBLACKWOODS FLAKEのような濃いめのヴァージニアフレーク
はかなり独特なので、一度試してみるのも面白いかと。

ああ、あとホッドスディライトのレビュー、
あれは私も全く同じ感想でした。
どうにも強烈な酸味が合わなかった印象があります。
その後に吸ったKENSINGTONは非常に気に入ったので、
それ以来、自分はGL Peaseはラタキア、という固定観念が付いてしまいましたが、
今吸ってみると感想は違ってくるのかもしれません。

ありがとうございます&お願い。

写真も素人ですが、毎週撮影にいってるんで少しマシかもしれません。

あ、ESOTERICAってビュテラのレシピですよね。
ビュテラはマクレーランドとジャーマイン、わけて作らせてるのがおもしろいですね。
気になってたんで一度試してみます。

ぼくはマクレーランドはフロッグモートンが初めてでした。
お薦めの濃いめのバージニアフレーク、つぎに仕入れて吸ってみます。
G.L.ピースもホッドスディライトが初めてで、いろいろ吸いたいです。
KENSINGTONですか、さっそくこれも次に。
あ、つぎの通販はこれでいっぱいになりそうです。

お願いがあります。
ぼくのブログでこちらをリンクしたいのですがいかがでしょうか?
お許しいただければすぐ作業にかかります。
ぜひ、よろしくお願いします。

毎度、返事が遅くなってしまってすいません。

リンクの方、了解しました。
まだまだ不勉強な点も多いですが、
何かの参考になれば幸いです。
よろしくお願いします。

リンクさせていただきました。

ありがとうございます。
ぼくのブログの初めてのリンクです(自分のサイト以外は)。
これからたびたびお邪魔させていただきます。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://sqbull.blog120.fc2.com/tb.php/121-68bb9988

 | HOME | 

Calendar

« | 2024-03 | »
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

Categories

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Appendix

sq

sq

主にSquat Bulldogの収集がメイン
高級なものは無いけど、良いモノを揃えていきたいです。
sq_bull+yahoo.co.jp <+→@>